【第五章】私とバレエのものがたり|見えない不安と戦いながら、夢に賭けた準備期間

Ballet Diary

〜バレエ団オーディションへの挑戦に向けて〜

「プロのバレエダンサーになりたい」

その言葉が、ようやく自分の口から出たあの日。
私の毎日は、それまでとはまったく違うものに変わりました。

なんとなく受けていたレッスンには明確な意味が生まれ、「夢」という言葉は、急に“現実”として重くのしかかるように。
でも、その重みは、どこか嬉しく、誇らしいものでした。

こうして始まった、バレエ団のオーディションに向けた、私なりの“挑戦”の時間。
今回は、その準備期間について綴っていきたいと思います。


両足にメスを入れる覚悟――人生初の大手術

2022年11月15日。
私は人生で初めて、全身麻酔を受け、両足の足首にメスを入れました。
目的は、両足の三角骨摘出前方の距骨を削るという、計4箇所の手術。

この手術の3ヶ月前から、「バレリーナになるために必要な選択だ」と自分に言い聞かせ、強い覚悟を持って日々を過ごしていました。

手術は無事成功し、5泊6日の入院生活を終え、2日目にはゆっくりとではありますが歩けるように。両足の手術だったからこそ、松葉杖なしでの回復に挑むことになりました。

腫れや痛みはあったものの、不思議と不安はありませんでした。
私はただ、前を見ていたのです。

「この機会に、身体を根本から改造しよう」

そう決めた私は、理学療法士さんと共に、立ち方や歩き方から見直し、無理のないペースでクラスに復帰していきました。

その結果、約8ヶ月で痛みのない状態にまで回復。
ですが私は、「まだ改善できる」と感じ、1年4ヶ月間リハビリに通い続けました。

解剖学の知識をもとに身体の理解を深めていく中で、手術前よりも少ない力で大きく踊れる身体へと変わっていくのを実感しました。


足が治った、その先へ

2023年7月末。
ようやく、どこにも痛みを感じることなく踊れるようになりました。

さあ、ここからが本番。
オーディションへの準備が、いよいよスタートします。

…とはいえ、どうやって海外のバレエ団のオーディションを受けたらいいのか、当時の私は何も分からず、気持ちだけが先走っていました。

そんな時、偶然ネットで見つけたのが「海外オーディション講座」。

現役で海外のバレエ団に所属している方々が、オーディションのサポートをしている講座で、まさに私が探し求めていた情報や環境が、そこにはありました。

ただ、サポートを受けるにはお金もかかるし、内容も最初はよくわからず…。
1週間ほど悩んだ末、1年間のサポートを受けることに決めました。


サポートを受けて学んだこと

この講座で私は、

  • バレエダンサーとしての心構え
  • オーディションでのアプローチ方法
  • バレエ団が求めるニーズ

など、目に見えない部分まで丁寧に教えていただきました。

英語が苦手で、海外のバレエ学校に通っていない私にとって、すべてが初めてで、未知の世界。でも、だからこそ本気で学びたかったんです。


最初の挑戦は、コンクール

まず始めたのは、コンクール出場
わずか2ヶ月で、3つのオーディションに出場しました。

それまでの私は、ただ舞台に立てることが嬉しくて、コンクールを“楽しむ”ものだと捉えていました。
でも今回からは違います。

順位を取らなければ意味がない

そんな強い覚悟で臨んだ最初のコンクールで、4位入賞という結果を得ることができました。
嬉しさと驚きが入り混じる、忘れられない瞬間でした。

2つ目は惨敗。
でも3つ目では5位入賞を果たし、少しずつ自信が育っていくのを感じました。


撮影、準備、そして…初めての送信ボタン

続いて、写真撮影とビデオ撮影。

知り合いにお願いして格安で写真を撮ってもらい、ビデオは何度も撮り直しながら完成度を高めていきました。

そしてついに、履歴書・写真・ビデオを添付して、バレエ団にメールを送る日がやって来たのです。

初めてメールを送った時の、あの緊張感は今でも覚えています。

とうとう私も、バレリーナへの第一歩を踏み出した

その喜びと高揚感は、何ものにも代えがたいものでした。


まとめ|夢に手を伸ばす勇気が、私を変えてくれた

この準備期間は、まさに**“挑戦”そのもの**でした。

手術とリハビリ、不安や葛藤、そして小さな達成の積み重ね。
痛みと向き合いながら、自分の身体を見つめ直し、“どうすれば自分らしく踊れるか”を真剣に考えるようになりました。

そして「海外オーディション講座」との出会いは、私の世界を一気に広げてくれました。
見えなかった道に光が差し、「私にもできるかもしれない」という希望が、心に芽生えた瞬間でした。

「順位を取ること」に真剣になったのも、この時が初めて。
かつての私にはなかった視点で、現実と向き合う覚悟を持つようになりました。

たくさん悩み、涙を流し、それでも前に進もうと決めた日々。
何も手にしていなかったけれど、「自分を信じて、行動する力」だけは、確かに育っていたと思います。

そして、ついにその時が来ます——
人生で初めて、自分の意志で海外へ飛び立ち、夢の扉をノックしに行く日が。

次章では、私の人生を大きく動かした“初めてのオーディション”について綴っていきます。
どうか、次のページも見守っていてください。

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